QUAD Vena アンプの故障修理

QUAD Vena Speaker Relay OMRON G2R-2-DC24

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目次

QUAD Vena の故障について (左チャンネルスピーカーの音量が出ない)

試聴システム2 (QUAD Vena + Vienna Acoustics Haydn Grand Special Edition)の左チャンネルの音がジュルジュルとした雑音が混ざり始め、次第に音量が出なくなる不具合が生じました。

このアンプはイギリスのショップから個人輸入したため、修理するにはイギリスに送る必要があるため、手間とコストを考え自力で修理を行いました。日本の販売店で購入された方は真似をせず販売店に修理を依頼されたほうが良いかと思います。

問題切り分けのため、スピーカーを別アンプで駆動しスピーカーに問題ないことを確認。Venaを開けてプリアンプ部の入力(ライン入力、USB入力、OPT入力、COAX入力、Bluetooth受信)、内蔵DAC、プリアンプ出力をチェックしたが問題なし。パワーオペアンプLM3886の出力も問題ないことから、スピーカー出力のリレーが劣化したと判断し、リレーの交換を行いました。

QUAD Vena and Elite Pre
QUAD Vena 上蓋を外した状態

リレー交換の準備

Digikey等から新品のリレーを購入しておきます。今回はついでに電源のリレーも購入しました。
スピーカー出力のリレーの型番は「OMRON G2R-2 DC24」です。
電源のリレーの型番は「OMRON G2R-2 DC5」です。

スピーカー出力のリレー「OMRON G2R-2 DC24」はこちらから購入できます。

電源リレー「OMRON G2R-2 DC5」はこちらから購入できます。

リレーの交換

リレーを交換するためにはメインPCB基板を外して基板の裏側からリレーのハンダ付けが必要になります。
そのため分解作業が必要になります。

ケース裏側のネジを外し上蓋を取り外します。

QUAD Vena open the Top cover
QUAD Vena open the Top cover

配線コネクタを全て外し、フロントパネルを止めるネジを外しフロントパネルを外します。

QUAD Vena Front PCB

電源トランス中央上部のナットを外し電源トランスを外します。(電源トランスを外さないとメインPCB基板が外れないためです)

スピーカー出力リレー(OMRON G2R-2 DC24)と電源リレー(OMRON G2R-2 DC5)は下写真のメインPCB基板上の赤枠と緑枠の位置にあります。

QUAD Vena Main PCB Speaker and Power Relay Position
QUAD Vena Main PCB Speaker and Power Relay Position

ケース後ろ側の入出力端子を止めるネジおよびメインPCB基板を固定するネジを取り外し、ケースからメインPCB基板を取り外します。
下の写真はスピーカー出力リレー(OMRON G2R-2 DC24)を基板裏側から見たものです。
基板の裏側からリレー端子のハンダを吸い取りリレーを取り外します。

QUAD Vena Relay pins in Bottom side PCB

購入した新しいスピーカー出力リレー (OMRON G2R-2 DC24)をハンダ付けします。
元のリレーの上部に貼ってあったフェルトを外し、新しいリレーの上部に貼りなおします。

QUAD Vena Speaker Relay

リレーの取り外しは、ハンダ吸取器を使うと基板を傷めずにスルーホール内のハンダを綺麗に除去できます。
写真は愛用のHAKKO FR-301です。手動のはんだ吸取器はスッポンの反動で基板の配線にダメージを与える可能性があるので大事な基板を扱う場合は使用しなくなりました。「能書は好筆を用う」です。

新しいリレーに交換した後、メインPCB基板をケースに取り付け、入出力端子とメインPCB基板のネジを取り付けます。
トロイダルトランスを取り付け、フロントパネルを取り付けます。
配線コネクタを全て取り付け、 上蓋を取り付け元に戻します。

動作確認

全て正常に動作することを確認し、左チャネルスピーカー出力のひずみと音量の問題は解決しました。
リレー交換によりスピーカー出力信号経路の接点がリフレッシュしたことで音の透明感が増したような気がします。

推定故障原因

OMRON G2R-2 DC24の接点が経年変化で酸化被膜が生成され接触不良に至ったと思われます。通常ある程度の電流・電圧が印加されるとアークにより酸化被膜が破壊され(接点のクリーニング作用)接触性能が維持されますが、オーディオアンプの場合ボリュームを絞って電源のON/OFFを行うためスピーカー出力リレーにはほとんど電流が流れない状態での開閉となるためアークが殆ど発生せずクリーニング作用が働かないため酸化被膜が成長し接触不良に至ったと考えられます。
電源リレーOMRON G2R-2 DC5は電源のON/OFF時に電源突入電流によるアークが発生するため酸化被膜が破壊され接触不良は起きていなかったと思われます。
リレーの接点を観察してみると、電源リレーOMRON G2R-2 DC5はアーク痕が確認できましたが、スピーカーリレーOMRON G2R-2 DC24にはアーク痕は確認できませんでした。

電源リレー OMRON G2R-2 DC5 (右上の接点中央部にアーク痕あり)

スピーカーリレー OMRON G2R-2 DC24(右上の接点中央部にアーク痕ほぼなし)

OMRON G2R-2 DC24 (及びG2R-2 DC5) の接点は銀合金のため酸化しやすくスピーカーリレーのような微小電流開閉用途では長期間の接触性能維持は難しいと考えられます。
定期的にリレー接点を磨くか、リレー交換を行うことが必要と思います。

メインシステムのパワーアンプ Quad Elite QMPでもVenaと同様に左チャンネル側で音量が小さくなる現象が起きてしましました。
普段再生している音楽はオーケストラものが多いため、低音楽器が少ない(スピーカーの駆動電流量が少ない)左チャンネルが右チャンネルより接点のクリーニング作用が働かず酸化被膜が成長し接触不良に至ったと思われます。


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この記事を書いた人

28年間 外資系と日系の半導体企業で主にデジアナ混載LSI、32bitマイコン、アナログIC、RFIC等の設計をしてきました。
これまで世の中に無かった半導体製品および関連するツールや製造関連機器等を独自に設計・開発し世に送り出してきました。
長年の趣味であるオーディオの分野で自分が欲しい世の中に無い製品を開発し世に広めたいと思い2023年より事業を開始いたしました。
好きな音楽はクラシック音楽です。弦楽器(チェロ)をたまに弾きます。

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