USBオーディオアイソレータUAI-1によるグランドループノイズ等のアナログ信号出力ノイズの改善

Noise measurement when isolation is inserted into the USB cable

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目次

電気的に絶縁された信号接続と音質について

近年、ネットワークオーディオの音質向上方法として光LAN接続がマニアの間で広がっています。
これは導体を用いたLANケーブルで接続された機器間に発生するLAN回路起因の伝送ノイズやLANケーブルに侵入する外部ノイズに対し、光LAN接続では電気的に絶縁された光ファイバーを接続に用いるためこれらのノイズの伝搬や侵入を遮断しノイズフロアの悪化を防ぎます。聴感上、微小レベルの音が明瞭となり、ステージ空間の透明度や広がりが改善されます。

ネットワークオーディオ以外のS/PDIF接続、USB接続においても同様の音質差が生じています。
光デジタル接続(オプティカル)、同軸デジタル接続(コアキシャル)、USB接続の3種の接続を聞き比べてみると、
光デジタル接続はジッター特性が不利になるにも関わらず、聴感上は一番自然で透明感が高く空間再現力が高い音質となります。
ハイレゾフォーマットの対応力(サンプリング周波数、ビット幅)についてはUSB接続が群を抜いていますが、聴感上は光デジタル接続の自然な空間再現力に達していないと感じます。

ネットワークオーディオ機器以外のオーディオ機器でPCM 192kHzを超えるハイレゾ音源を高音質で再生するためにはUSB接続の音質改善が必要となり、改善方法としては光接続のように機器間の接続を電気的に絶縁しノイズの伝搬や侵入を遮断することが最適解となります。

機器間のUSB接続を電気的に絶縁するため、磁気結合ガルバニック絶縁を用いたUSB オーディオアイソレータ UAI-1を開発しまた。
光デジタル接続よりノイズが多いUSB接続を光デジタル接続と同等のノイズ遮断特性に改善する検証を行ったので紹介します。

導体を用いた信号ケーブル接続とノイズについて

導体を用いた信号ケーブルで機器間を接続すると下記3種のノイズの伝搬や侵入が生じます。
デジタル信号ケーブルにこれらのノイズが乗った場合でも、DAC以降のアナログ信号出力にノイズフロアの悪化等の音質低下の悪影響を招きます。

グランドループノイズ

グランドループノイズ(Grand Loop Noise)は、電子機器や電子回路におけるノイズの一種です。特に、回路のグランド(接地)ループ内で発生するノイズを指します。このノイズは、電源ラインや接地線の不具合、または他の回路からの干渉によって生じることがあります。

コモンモードノイズ

コモンモードノイズ(Common Mode Noise)は、電気回路において、2本の導体間で同じ周波数と位相のノイズが発生する現象のことです。これは、電源ラインや信号ラインにおいて、外部からのノイズが両方の導体に同時に影響を与えることで生じます。このノイズは、通常の信号と混ざり合い、正確な信号の伝送を妨げることがあります。
上流の機器がスイッチング電源(SMPS)の場合、DC電源レール(USB接続の場合、VBUSとGND)は常にコモンモードノイズが生成されて下流の機器に伝搬されます。

ノーマルモードノイズ

ノーマルモードノイズ (Normal Mode Noise)は、通常のモードでの雑音のことを指します。具体的には、機器やシステムが通常の動作モード(ノーマルモード)で発生するノイズや、その環境での背景雑音を意味します。
コモンモードノイズと同様に上流の機器がスイッチング電源の場合、DC電源(USB接続の場合、VBUS)は常にノーマルモードノイズが生成されて下流の機器に伝搬されます。

測定方法

PCから正弦波のデジタルデータ(周波数: 1kHz、レベル: -3dB)をDAC内蔵プリメインアンプのUSB入力または光デジタル入力(Optical S/PDIF)に送り、プリメインアンプのボリュームをMaxにした状態でプリアンプ出力(アナログ出力)をCosmos ADCとREWで計測します。
(グランドループノイズ測定の感度を上げるためアンプのボリュームをMaxにしています。プリアンプの特性に起因した高調波とノイズフロアが若干見えています。)

以下3種類の接続方法のノイズレベルを計測しました。

  1. 光デジタルケーブル接続 (リファレンス):
    光デジタル信号ラインは電気的に絶縁されているためグランドループは生成されず、グランドループノイズは発生しません。
    電源レールが無いため、コモンモードノイズ、ノーマルモードノイズは伝搬されません。
  2. USBケーブル接続 (アイソレータ無し):
    電源とUSBラインのグランドでグランドループが生成され、グランドループノイズが発生します。
    USB電源レールにより、コモンモードノイズ、ノーマルモードノイズが伝搬されます。
  3. USBケーブル接続 (アイソレータ有り):
    USBラインが電気的に絶縁されるのでグランドループは切断され、グランドループノイズは発生しません。
    USB電源レールは遮断され、コモンモードノイズ、ノーマルモードノイズは伝搬されません。

グランドループノイズ、コモンモードノイズ、ノーマルモードノイズに対するUSBアイソレータの効果測定

1.光デジタルケーブル接続 (リファレンス)

電気的に絶縁されてる光デジタルケーブル接続のプリアンプ出力信号スペクトラムです。
グランドループノイズ、コモンモードノイズ、ノーマルモードノイズが無い状態です。
このスペクトラムをリファレンスとします。

2.USBケーブル接続 (USBアイソレータ無し)

光デジタルケーブル接続に比べ低音域のノイズレベルが増えています。
グランドループノイズ、コモンモードノイズ、ノーマルモードノイズが発生しプリアンプ出力のノイズフロアを悪化させています。(特性的にはグランドループノイズの影響が大きそうです)
聴感上もステージ空間の見晴らしが悪く、楽器の音像が滲み、うるおいや艶が失われた感じになります。

3.USBケーブル接続 (USBアイソレータ有り)

USBオーディオアイソレータ UAI-1を用いると、USBケーブル接続(USBアイソレータ無し)で発生していた低音域のノイズが無くなりました。リファレンスの光デジタルケーブル接続と同等のノイズレベルになっています。
グランドループノイズ、コモンモードノイズ、ノーマルモードノイズがアイソレータにより遮断され、プリアンプ出力のノイズフロアへの影響を防いでいます。
聴感上もステージ空間が広く透明感が高く、楽器の音像は明瞭となり、うるおいや艶がある音質に改善されます。

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この記事を書いた人

28年間 外資系と日系の半導体企業で主にデジアナ混載LSI、32bitマイコン、アナログIC、RFIC等の設計をしてきました。
これまで世の中に無かった半導体製品および関連するツールや製造関連機器等を独自に設計・開発し世に送り出してきました。
長年の趣味であるオーディオの分野で自分が欲しい世の中に無い製品を開発し世に広めたいと思い2023年より事業を開始いたしました。
好きな音楽はクラシック音楽です。弦楽器(チェロ)をたまに弾きます。

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