レコードプレーヤーについて
レコード再生機器開発用試聴機器として、ターンテーブルはMichell Engineering社のOrbe、トーンアームはSME社のSeries V、カートリッジはGoldring社のLegacy (MCカートリッジ)を使用しています。
振動遮断性能が高いフローティングタイプのターンテーブルにより外部振動を遮断し、振動吸収性(減衰性)が高いマグネシウム合金製+超高精度ベアリング軸受けのアーム、同様に振動吸収性が高いマグネシウム合金ボディのカートリッジの組み合わせにより、レコード再生時にカートリッジが発生する振動を減衰・吸収し余計な共鳴音・付帯音を抑制することでS/N比が良く音像が滲まない立体的な再生音を得られています。
再生音は、照明を落とした静寂なコンサートホールでオーケストラの楽器がひとつひとつ立体的に浮かび上がりステージからホール全体に美しいハーモニーが広がっていく空気感の再現性が高いと感じます。カートリッジの音色はデジタル機器では出しにくい自然で上質かつ伸びのある倍音が特徴的でオーケストラの弦楽器や木管楽器の繊細でしっとり柔らかく深い表現を得意にしています。
Michell Engineering Orbe ターンテーブル

Michell Engineering 社ターンテーブルのフラッグシップモデルです。
Michell Engineering 社のターンテーブルはGyroDecが有名ですが、このOrbeはGyroDecの上位機種となり、オプションでGyroDecをOrbeに近い仕様にアップグレードするキット(Orbeプラッター+クランパーのキットとNever Connected™ 回路アップグレード電源)を販売されています。
特徴は、
・スパイクで3点支持されたアクリル製ベースを2枚(プライマリーベース、セカンダリーベース)重ね、上側のセカンダリーベースに3つのサスペンションタワーを固定、それどれのサスペンションタワーからスラストボールでピンポイントで支持されたスプリングサスペンションでメインベアリング、プラッター、トーンアームが取り付けられた金属製サブシャーシが吊り下げられ、ピンポイント支持+フローティング構造のインシュレーターにより外部振動を遮断しています。
・プラッターを支持するメインベアリングは、サブフレームに固定された軸の上部に回転の支点のスラストボールがあり、ベアリングの内側の穴に機械加工した改良型アルキメデスのねじによりプラッターが回転しているあいだ底部のオイルリザーバーからスラストボールまでオイルが引き上げれられ、完全に潤滑された後、ベアリングスピンドルに開けられた廃棄穴からリザーバーに戻されオイルが循環します。このメインベアリングの潤滑構造によりプラッターの回転により発生するノイズや振動を抑えています。
・プラッターは振動減衰特性と音響的にレコード盤に非常に類似した素材を用いることでニュートラルなサウンド特性になっています。プラッターの非常に重い質量による回転速度の安定性により、音像と音程の安定性、低音の再現力が高くなっています。
・ターンテーブルを駆動するモーターユニットはターンテーブルから完全分離され、モーターとターンテーブルを繋いでいるのはプラッターを駆動するベルトのみです。これによりモーターが発生するノイズや振動がターンテーブルに伝わるのを防いでいます。
・Orbe コントローラー電源は大型トロイダル トランス、Never Connected™ 回路、サーボ モーター制御テクノロジーを使用により、主電源からのノイズを遮断し正確で安定した速度でモーターの回転を制御してします。
・Orbe レコード クランプはねじ込み式のレコードクランパーでレコード盤をプラッターに強い力で圧着しレコード盤の反りや歪を矯正しレコード盤の共振を排除します。
フローティングタイプの極みのようなターンテーブルなのでセッティングに手間がかかりますが、きちんと調整を行えば、静寂性、重量感、音像の安定性、立体感に優れたサウンドステージをもたらしてくれます。
GyroDecとOrbの違いを下記表に示します。
Orbe | GyroDec | |
プラッター | 60mm厚のインピーダンス整合された高慣性アクリル/ビニール製プラッター | インピーダンス整合されたアクリル/ビニール製プラッターと真鍮製の重り |
電源 | Orbeコントローラー (大型トロイダル トランス、Never Connected™ 回路、サーボ モーター制御技術を使用) | ACアダプタ電源(24V) |
アクリルベース | ダブルアクリルベース | シングルアクリルベース |
クランパー | ねじ込み式レコード クランプ | 標準レコードクランプ |
重量 | 19kg | 14kg |
SME Series V トーンアーム

SME社トーンアームのフラッグシップだったモデルです。(現在は販売されていません)
ダイナミックバランス型トーンアームで、ヘッドシェル、アーム、バランスウェイトカンチレバーにマグネシウム合金、カウンターウェイトはタングステン合金、その他主要部品は亜鉛ベース合金、軸受けには超高精度高品質のABEC 7 ラジアルシールドベアリングを使用。内部配線は銀リッツ線。シリコンオイルダンプを標準装備しています。
振動吸収性(減衰性)のマグネシウム合金と超高精度ベアリング軸受けにより余計な付帯音が無い静粛性、透明感、立体感に優れた再生音です。
SME Series Vとの比較対象として、以前使用していた SME 3009(中期型)、SME 3010R、Audio Craft AC-3000はアームの材質(ステンレス、真鍮等)と構造(ナイフエッジ、ワンポイントサポート、スタティックバランス)による固有の付帯音があり再生音にプラスアルファの味付けが加わるため賑やかな音(楽しい音、味のある音)と感じます。
SME Series V スペック
・有効質量 10.0/11.0g
・カートリッジバランス範囲 4.2 – 18.0g
・垂直トラッキングフォース 0 – 3.0g(30mN)
・最大トラッキングエラー 0.012(deg/mm)
・ヌルポイント 内側 66.04mm、外側 120.90mm
・付属フォノケーブル 長さ 1.2m
・付属フォノケーブル 静電容量値 140.0 pF
・付属フォノケーブル 抵抗値 0.145 Ω
・内部配線 静電容量値 15.0 pF
・内部配線 抵抗値 0.5353 Ω
・出力プラグソケット DIN 5-pole 240°
Goldring Legacy MCカートリッジ

Goldring社MCカートリッジのフラッグシップだったモデルです。現在Ethosにフラッグシップの座を譲っています。
特徴としては、非常に軽量かつ極めて頑丈な超低共振マグネシウム金属ボディ、針は質量が非常に少ない「Vital」ファインラインダイヤモンド、硬質合金カンチレバー、コイルは最高純度の銅のみを使用して手巻きされています。
音質は、クラッシック音楽を深く繊細に生演奏のように再現します。特に弦楽器の倍音の音数が豊富で、オールドの弦楽器しか出せないような緻密で色彩豊かな熟成された美音が空間に広がります。
Goldring Legacy スペック
型式:MC型
・再生周波数:20 – 30,000Hz ±3dB
・チャンネルバランス:1 kHzで1 dB以内
・チャンネルセパレーション:1kHzで25dB以上
・出力電圧:0.25 mV +/- 1 dB @ 1 kHz
・スタティックコンプライアンス:25mm/N
・ダイナミックコンプライアンス@ 10 Hz:15mm/N
・垂直トラッキングアングル:20°
・スタイラス:Vital fine-line diamond
・負荷抵抗:100Ω
・負荷容量:100 – 1000pF
・内部インダクタンス:3μH
・内部抵抗:7Ω
・カートリッジ質量:8.0g
・カートリッジ質量 (固定具含む):8.9g
・取り付け穴間隔:12.7mm
・針圧:1.5 – 2.0g (推奨1.7 g)