Wiim Pro Plus付属のUSB電源アダプターはオーディオに向いているのか?
アマゾンのセールでコストパフォーマンスが良いと言われているWiim Pro Plusを購入しました。
Wiim Pro Plusの電源はUSB電源アダプターから給電するシステムになっています。
ネットでユーザーの評判を見るとこのUSB電源アダプターに物足りなさを感じ、GaNを用いたUSB電源アダプターやトランス式リニア電源に交換することで音質改善を図っている方々が少なからずいらっしゃるようです。
私自身もWiim Pro Plusを使ってみて、いくつか音質を改善する製品案を思いつき開発に着手しました。
詳細は別のブログで紹介したいと思います。
Wiim Pro Plusのデフォルトの状態を把握するため、付属のUSB電源アダプターを評価してみました。
また、市販のUSB電源アダプターにより音質改善が期待できる可能性を確認するため、GaNを含む手持ちのUSB電源アダプターの評価を行ってみました。
USB電源アダプターの音質に影響すると考えられる特性として、
1.USB電源出力のノイズレベル
2.オーディオ機器の消費電流の変動に対する電圧の安定性
の2点が気になるので、これらについて評価してみました。
各種USB電源アダプターのノイズ特性と負荷変動特性評価
ノイズレベルの評価は、付属USB電源アダプターの定格(5V、2A)に合わせて負荷電流2Aを出力した状態で、各USB電源アダプタ出力ノイズのスペクトラムを測定しました。
負荷変動特性の評価は、USBケーブル(USB3.1 TypeA/C: HOTRON E246588 太さ5.2mm ケーブル長1m または USB3.1 TypeC/C E344977-Q 太さ5.2mm ケーブル長1m)を繋いだ先で電子負荷とマルチメータを用いてケルビン測定をしています。
Wiim Pro Plus付属USB電源アダプター
Wiim Pro Plusに付属している 出力電圧 5V、電流 2Aの小型で軽いUSB電源アダプターです。
出力: 5V2A

ノイズ特性
スイッチング周波数は30数kHz辺りで、ノイズレベルは全般的に高めで4kHz辺りに少し山があります。

負荷変動特性
USBケーブル(USB3.1 TypeA/C: HOTRON E246588 ケーブル長1m)を繋いだ先でケルビン測定をしています。
負荷電流の変化に対し出力電圧値は若干うねりながら変化しています。
定格 5V 2Aに対し、2.1Aを超えると過電流保護が働き出力を停止しています。

Anker Nano II 65W USB電源アダプター
AnkerのUSB PowerDelivery (PD) 対応65W出力 GaN搭載USB電源アダプターです。
パワーの割にコンパクトですが重量はそれなりにあり質感は高いです。
出力: 5V 3A / 9V 3A / 15V 3A / 20V 3.25A

ノイズ特性
GaN搭載によりスイッチング周波数は40数kHzと高くなっています。ノイズレベルは全般的に周波数が高くなるに従い下がる傾向ですが100Hzの高調波が全域に広がっているように見えます。

負荷変動特性
USBケーブル(USB3.1 TypeC/C E344977-Q ケーブル長1m)を繋いだ先でケルビン測定をしています。
負荷電流の変化に対し出力電圧は若干ジグザグ状に変化しています。
定格 5V 3Aに対し、3.3Aを超えると過電流保護が働き出力を停止しています。

Elecom USB電源アダプター EC-AC6820WH
エレコムのUSB PowerDelivery (PD) 対応20W出力 GaN搭載USB電源アダプターです。
価格が手ごろで軽量コンパクトです。
出力: 5V 3A / 9V 2.22A / 12V 1.67A

ノイズ特性
スイッチング周波数は70数kHz?、ノイズレベルは全般的にやや低めですが100Hzの高調波が全域に広がっているように見え、10kHz辺りに少し山があります。

負荷変動特性
USBケーブル(USB3.1 TypeC/C E344977-Q ケーブル長1m)を繋いだ先でケルビン測定をしています。
負荷電流の変化に対し出力電圧はリニアに変化しています。
定格 5V 3Aに対し、3.2Aを超えると過電流保護が働き出力を停止しています。

RAVPOWER 65W USB電源アダプター (RP-PC133)
USB PowerDelivery (PD) 対応65W出力 GaN搭載USB電源アダプターです。
VGP2021の「スマートフォン関連アクセサリー(充電関連)」部門を受賞しています。
音の良いUSB電源アダプターとして定評があるようです。
出力: 5V 3A / 9V 3A / 12V 3A / 15V 3A / 20V 3.25A

ノイズ特性
スイッチング周波数は判別できません。ノイズレベルは全般的にやや低めで、他のUSB電源アダプターで観測される100Hzの高調波はほとんど存在しません。5kHz辺りに少し山があります。

負荷変動特性
USBケーブル(USB3.1 TypeC/C E344977-Q ケーブル長1m)を繋いだ先でケルビン測定をしています。
負荷電流の変化に対し出力電圧は無負荷時を除きリニアに変化しています。
定格 5V 3Aに対し、3.2Aを超えると過電流保護が働き出力を停止しています。

Apple USB Power Adapter 20W
Apple iPad (第9世代)に付属していた20W USB電源アダプターです。
出力: 5V 3A / 9V 2.22A

ノイズ特性
スイッチング周波数は50数kHz、ノイズレベルは全般的にやや高めで、100Hzの高調波が全域に若干広がっているように見え、5kHz辺りに少し山があります。

負荷変動特性
USBケーブル(USB3.1 TypeC/C E344977-Q ケーブル長1m)を繋いだ先でケルビン測定をしています。
負荷電流の変化に対し出力電圧は低負荷時に若干うねりを認められますがほぼリニアに変化しています。
定格 5V 3Aに対し、3.5Aを超えると過電流保護が働き出力を停止しています。

Anker PowerPort 4 40W USB電源アダプター
古い機種になりますが、Ankerの4ポート合計40W USB電源アダプターです。
出力: 5V 8A (each 2.4A max)

ノイズ特性
スイッチング周波数は30数kHz、ノイズレベルは全般的に低めですが、100Hzの高調波が全域に若干広がっているように見え、4kHz辺りに少し山があります。

負荷変動特性
USBケーブル(USB3.1 TypeA/C: HOTRON E246588 ケーブル長1m)を繋いだ先でケルビン測定をしています。
負荷電流の変化に対し出力電圧は0.7Aから0.8Aの間に大きな段付きがあり、その領域以外はリニアに変化しています。
定格 5V 2.4Aに対し、2.7Aを超えると過電流保護が働き出力を停止しています。

Apple USB Power Adapter 12W
かなり古い機種ですが、Apple iPad Airに付属していた12W USB電源アダプターです。
出力: 5.2V 2.4A

ノイズ特性
スイッチング周波数は判別できません。ノイズレベルは全般的に低めですが、周波数が高くなるに従い上がる傾向です。100Hzの高調波がわずかに広がっているように見え、10~20kHz辺りに少し山があります。

負荷変動特性
USBケーブル(USB3.1 TypeA/C: HOTRON E246588 ケーブル長1m)を繋いだ先でケルビン測定をしています。
負荷電流の変化に対し出力電圧はリニアに変化しています。
定格 5.2V 2.4Aに対し、2.5Aを超えると過電流保護が働き出力を停止しています。

ASUS AD837920 5V 2A USB電源アダプター
かなり古い機種ですが、Asus Notebook T Series T100TAに付属していた5V 2AのUSB電源アダプターです。
出力: 5V 2A

ノイズ特性
スイッチング周波数は50kHz辺り、ノイズレベルは全般的にやや高めですが100Hzの高調波が2kHz位まで広がっているように見え、10kHz辺りにわずかに山があります。

負荷変動特性
USBケーブル(USB3.1 TypeA/C: HOTRON E246588 ケーブル長1m)を繋いだ先でケルビン測定をしています。
負荷電流の変化に対し出力電圧は1A以下ではうねりを認められますが1A以上ではほぼリニアに変化しています。
定格 5V 2Aに対し、2.2Aを超えると過電流保護が働き出力を停止しています。

負荷変動特性まとめ
オーディオ機器の消費電流の変動に対してUSB電源出力電圧の変動がリニアで変動幅が少ないのが理想形です。
電圧の変動が非線形で変動が大きいと音楽波形の大小に応じてオーディオ機器の電源電圧が変動するため歪の発生につながります。
グラフが全体に右肩下がりなのは、USBケーブルの抵抗による電圧降下と各USB電源アダプターの特性によるものです(USBケーブルは、TypeA/C: HOTRON E246588 USB3.1 ケーブル長1m、TypeC/C: E344977-Q USB3.1 ケーブル長1m)
グラフの線がジグザグでは無く真っ直ぐな線になっているUSB電源アダプターはオーディオ機器の歪を発生させにくいと考えられます。
測定時に電圧測定値の変動が最も少なく安定していたと感じたのはRAVPOWER 65W USB電源アダプターです。

オーディオ機器向けのUSB電源の可能性
Wiim Pro Plusの付属USB電源アダプターは特別良くも悪くもなく平均的な特性という印象です。これより良い特性の製品もあったので自分の好みのUSB電源アダプターを使う楽しみはあると思います。
最近のUSB電源アダプターのトレンドは急速充電対応に対応した小型・高効率で発熱が少ないモデルが主流です。充電能力を高めるためにGaNを採用し可聴帯域よりはるかに高い周波数でスイッチングを行っていますが可聴帯域内の高調波が多いものや、USB PDや急速充電対応のための複雑な制御を行うためかロードレギュレーションが非線形になっている製品もあるので、オーディオ用途では最新モデルは慎重に選んだほうが良いと思いました。
今回いくつかUSB電源アダプターを測定することで、オーディオ向けUSB電源の開発意欲が湧いてきました。
私が開発・販売しているUSBオーディオアイソレーターのUSB電源出力ノイズレベルは測定限界までローノイズを実現しています。USB2.0の規格に合わせて出力電流を500mAで設計していますが、今回のWiim Pro Plusを使うにあたり、出力電流を2~3Aに拡張した超ローノイズUSB電源を自分自身が欲しくなってしまい、超ローノイズUSB電源製品の開発を開始してしまいました。詳細は追ってブログで掲載する予定です。
USB電源はWiimのネットワークオーディオ機器以外にも、Raspberry-Piオーディオ、音楽制作のオーディオインターフェース機器等にも広がっています。音質を追求するユーザーが多い分野でオーディオ用ローノイズUSB電源の活用機会は広がっていくと考えています。
