レーザー加工機の導入
開発した製品の筐体に印字を行うためレーザー加工機を導入しました。
レーザー加工機とは、対象物にエネルギー密度の高いレーザーを照射し加工する機械のことです。切断やマーキング、彫刻の加工ができます。
シルク印刷等の印字方法に比べ製版の手間とコストがかからず、インク潰れも無いため微細で複雑な印字ができます。データ編集だけで加工ができるので、シリアルナンバーのように個別に印字が変わるものにも柔軟に対応できます。
導入したレーザー加工機は、xTool F1です。
金属を加工できるレーザー加工機は、xTool F1以外にLaserPecker 4が有名です。海外の比較サイトを見ると、安全シールドの作業性、排気処理(空気清浄機オプションの有無)、無料ソフトウエア付属、加工精度と速度等の点でxTool F1に優位性があると判断し導入しました。
xTool F1 とは
xTool F1は、クリエイティブツールズ香港株式会社が2022年に発売したデュアルレーザー(IR+ダイオードレーザー)を搭載した高速な携帯用レーザー切断機です。
・独自の高度なガルバノメーター技術により、4000mm/secという非常に高速な彫刻速度を実現しています。ガルバノメーターのX軸とY軸のミラーを高速で正確に回転および調整することにより、ミラーはレーザービームをさまざまな角度で彫刻対象物に瞬時に偏向させて彫刻します。
・0.00199mmの高い彫刻精度を実現しています。
・2W 1064nm赤外線レーザーと10W 455nmダイオードレーザーを搭載したダブルレーザー彫刻機です。
2W赤外線レーザーと10Wダイオードレーザーはソフトウェア上で自由に切り替えることができ、彫刻用に最大300種類以上の材料をサポートしています。さらに、2種類のレーザーを一度にセットアップでき、使用開始時には自動的に切り替えることにより彫刻と切断を1工程で完了します。
・焦点合わせは、自動と手動が可能です。
・プレビューは、四角い枠を映すボーダープレビューと輪郭線を映すアウトラインプレビューがあり、サイズと位置決めが簡単に確認できます。
・1064nm赤外線レーザーと455nmダイオードレーザーの有害なレーザー光をフィルタリングできるレーザーフィルターカバーが付いています。(写真の緑色のカバー) フィルターカバーは任意の高さで固定できるので様々な形状の対象物に対して加工ができます。
下の写真の左側が xTool F1です。 右側が xTool F1 Purifierです。

xTool製品は、xTool Japan ストアで購入できます。
Amazon、楽天、Yahooでも購入できます。

xTool F1 オプション
下記のオプションも導入しました。
空気清浄機Purifier
2層構造のH13 HEPAフィルターと活性炭フィルターを装備し、レーザー彫刻機の加工中に発生する煙、特有の臭い、有害物質を吸収してろ過し、煙中の5μm~0.03μm粒子を99.97%まで吸収し、ユーザーに安全な作業環境を提供します。空気清浄機PurifierはxTool F1が動作し始めると稼働し、F1の動作が停止すると追加の浄化の後に停止します。
F1の排気パイプを介して、F1のレーザーフィルターカバーで密閉された空間内の煙、臭い、有害物質を漏らさず吸収します。
常時動作モードも選択できるため、xTool F1のレーザー加工以外の使用方法として、吸気パイプを延長してハンダ吸煙機として活用しています。

xTool F1 ペダル スイッチ
xTool F1 の加工開始スイッチは本体側面上部にありますが、スイッチ操作により本体が揺れて加工対象のデバイスが移動してしまうリスクを回避するためペダル スイッチを導入しました。
加工対象物をセットした後はデスクから離れずにPCの操作とペダルスイッチで加工が行えるので作業効率が上がりました。

xTool F1 ペダルスイッチは、xTool Japan ストアで購入できます。
Amazon、楽天でも購入できます。

筐体へのレーザーマーキング
開発した製品の筐体にレーザーマーキングを行いました。加工する製品はUSBオーディオアイソレーターUAI-1です。
レーザーマーキングを行う加工対象は、アルマイト処理されたアルミ合金筐体のフロントパネルと、耐熱性ナイロン樹脂で形成されたバックパネルです。
ソフトウェアはxToolが無料提供している xTool Creative Space (XCS)を用います。
xTool F1の接続(USB,Wi-Fi,IP,Ethernet)を設定し、F1のデバイス設定(安全保護等)、処理モード(ベースプレート上、ロータリーアタッチメント使用、ベースプレートを外しF1を直接材料に置く使用方法、スライド拡張オプション使用)の設定を行います。
フロントパネルのレーザーマーキング
フロントパネルの素材はアルマイト処理されたアルミ合金です。XCSの材料選択はAluminum Sheetを選択し、予め試験材料を用いて光源を設定しレーザー出力と速度を調整しておきます。
レーザーマーキングの出来上がりをイメージしやすいように、筐体を設計した3D CADの画像データをPhotoshop等で実物大の画像データに変換しXCSにインポートします。XCS右側のこの画像データの処理パラメータでImageのOutputスイッチをオフにし、レーザーマーキングが行われないように設定します。
レーザーマーキングを行いたい文字列は、テキスト入力を選択し文字列を作成しサイズと位置を調整します。
XCS右側のこの文字列データの処理パラメータは彫刻を選び、オブジェクトのOutputスイッチはオンにします。試験材料で確認した光源とレーザー出力と速度を設定します。
F1のステージ中央に赤と青の光が出ているので、加工対象を光が当たる位置に置き、赤と青の光点が一致するようにF1側面上部のノブを回しフォーカスを調整します。
F1のステージにL字型位置決めパーツを設置し、加工対象をL字型位置決めパーツに接するように置きます。
XCS右下のフレーミングボタンを押すと加工対象にフレーミング光が走査されプレビューが行われます。
フレーミングボタン右側の…を押すとフレーミング設定となり、光の出力とフレーミングモード(長方形かアウトライン)が設定できます。
フレーミング光はレーザー光線なので保護シールドカバーを閉めて作業するか、別売りの保護ゴーグルを着用してフレーミング作業を行ってください。
フレーミング領域の位置を確認して意図した位置よりずれていた場合、XCS上の筐体画像と彫刻オブジェクトをまとめて位置を移動し調整します。意図した位置にフレーミング領域が来るまで調整を繰り返します。
フレーミング位置が確定したら、XCS右下の加工に移動アイコンを押します。
プレビュー画面に移動するので右上の加工ボタンをクリックします。
F1の保護シールドカバーを閉め、本体の側面上部のノブを押して加工を開始します。(オプションのフットペダルまたはボタンスイッチを接続している場合は、これらを押す)
フロントパネルのレーザーマーキング設定画面を下図に示します。

レーザーマーキング加工後のフロントパネルです。

バックパネルのレーザーマーキング
バックパネルの素材は耐熱性ナイロン樹脂です。XCSの材料選択はBlack Acrylicを選択し、予め試験材料を用いて光源を設定しレーザー出力、速度、加工回数を調整しておきます。
フロントパネルと同様にF1とXCSの設定を行います。
筐体を設計した3D CADの画像データをPhotoshop等で実物大の画像データに変換しXCSにインポートします。XCS右側のこの画像データの処理パラメータでImageのOutputスイッチをオフにし、レーザーマーキングが行われないように設定します。
レーザーマーキングを行いたい文字列は、テキスト入力を選択し文字列を作成しサイズと位置を調整します。XCS右側のこの文字列データの処理パラメータは彫刻を選び、オブジェクトのOutputスイッチはオンにします。試験材料で確認した光源、レーザー出力、速度、加工回数を設定します。
レーザーマーキングを行いたいDCジャックの極性の画像は、Inkscape等で作成しXCSにインポートします。XCS右側のこの画像データの処理パラメータでImageのOutputスイッチをオンにします。試験材料で確認した光源、ドット期間、電源、DPI、加工回数を設定します。
フロントパネルと同様に、フォーカス調整、フレーミング調整を行った後、加工を行います。
バックパネルのレーザーマーキング設定画面を下図に示します。

レーザーマーキング加工後のバックパネルです。

ボトムパネルのレーザーマーキング
ボトムパネルの素材はフロントパネルと同じアルマイト処理されたアルミ合金です。XCSの材料選択はAluminum Sheetを選択し、予め試験材料を用いて光源を設定しレーザー出力と速度を調整しておきます。
フロントパネルと同様にF1とXCSの設定を行います。
筐体を設計した3D CADの画像データをPhotoshop等で実物大の画像データに変換しXCSにインポートします。XCS右側のこの画像データの処理パラメータでImageのOutputスイッチをオフにし、レーザーマーキングが行われないように設定します。
レーザーマーキングを行いたい文字列は、テキスト入力を選択し文字列を作成しサイズと位置を調整します。XCS右側のこの文字列データの処理パラメータは彫刻を選び、オブジェクトのOutputスイッチはオンにします。試験材料で確認した光源、レーザー出力、速度、加工回数を設定します。
レーザーマーキングを行いたいDCジャックの極性の画像は、Inkscape等で作成しXCSにインポートします。XCS右側のこの画像データの処理パラメータでImageのOutputスイッチをオンにします。試験材料で確認した光源、ドット期間、電源、DPI、加工回数を設定します。
レーザーマーキングを行いたいQRコードの画像は、XCS左側のアプリーケーション→コードの生成を選択し、QRコードを生成します(筆者の場合はWebサイトのURLをQRコード化しています)。XCS右側のこの画像データの処理パラメータでImageのOutputスイッチをオンにします。試験材料で確認した光源、ドット期間、電源、DPI、加工回数を設定します。
フロントパネルと同様に、フォーカス調整、フレーミング調整を行った後、加工を行います。
ボトムパネルには、シリアルナンバーを印字しています。
XCS設定画面上のシリアルナンバーの文字列を個別に変えてレーザーマーキングを行います。
この柔軟性がパーソナルユーズのレーザー加工機のメリットと感じます。
ボトムパネルのレーザーマーキング設定画面を下図に示します。

レーザーマーキング加工後のボトムパネルです。
